社会保険労務士として、日々1000人近くの社員のあらゆる手続きを一人でこなす社労士しゅん太郎です。
社員数が多いと、保険証の対象範囲、社会保険料の額、雇用保険料の額、離職票、失業手当etc…幅広く問い合わせが来ます。
その中で、年金についての問い合わせも多いです。
今回は、年金についての基礎知識から手続き申請の流れ、年金額についてひも解いていきましょう。
これから年金を貰う方はもちろんのこと、受給者を支える働き世代も知っておくべきことを、分かりやすく紹介しますね。
Contents
最低限知っておきたい年金の基礎知識や仕組み!!
日本の年金制度は働き世代の社会保険料を財源として、年金を受給している方を支えている「賦課方式」です。
決して、毎月の給与から控除される保険料を貯蓄性のように「積立方式」ではありません。
では、具体的にどのような仕組みになっているのかわかりやすく紹介します。
・公的年金(国民年金・厚生年金)
・20歳~60歳が原則対象の年金
・公的年金は2階建て
公的年金(国民・厚生)の基礎知識や仕組み!!
年金は、どうしても老後のイメージが強いですが、その他に病気や怪我で障害を持った場合、配偶者が亡くなった場合にも年金として受給することが出来ます。
- 老齢年金(一定の年齢になる)
- 障害年金(怪我で障害が残る)
- 遺族年金(働き手が亡くなる)
簡単ではありますが、上記の対象となった人を、国が定めた一定の生活を保障する制度を『公的年金』と言います。
この公的年金は、原則20歳以上~60歳未満の国民全てが加入対象なので、日本の労働人口の大半が対象者です。
しかし、20歳未満から働く方もいますし、60歳を過ぎてもフルタイムで働く方も大勢いますよね。
そのように対象年齢外の方も、社会保険の加入条件を満たす場合は強制加入することになります。
ちなみに、原則3つの年金は同時に貰うことは出来ず、2つ以上の対象になった場合はどの年金を受けるか選択しなければなりません。
公的年金は2階建てで老後を支える!!
国民年金、厚生年金とよく聞くけど自分はどっちに加入しているの?
二つの年金があると混乱しがちですが、法人の会社で働いている方は大半が社会保険に加入することになります。
この3つを総称して、社会保険です。
「あ、それなら私は厚生年金だ」と思うかもしれませんが、イコール国民年金にも加入していることになります。
仮に、老後に年金をもらう場合は、国民年金からの老齢基礎年金と厚生年金からの老齢厚生年金の二つを貰うことが出来るのです。
障害年金、遺族年金についても同様に2階建てになっています。
その反面、自営業の方々は国民年金にのみにしか加入出来ません。
会社員よりも、自身で民間の保険に加入してあらゆるリスク管理を行う必要があります。
では、なぜ会社員は2階建てで手厚く年金が貰えるのかというと、自身で払う保険料と同額を会社も払ってくれるからです。
国民年金には、納める額は一人当たり2万円も行きませんが、厚生年金ともなれば会社分も合わせると収入によって変動しますが倍以上の保険料です。
案外、会社が一緒に負担してくれていることを知らない方も多いいですが、覚えておきましょう。
本来のあなたの納めなければならない保険料は、給与明細に記載された額の2倍だということを。
年金はどのくらい貰えるの!?
一言でいうと、払った月数と払った額によって決まります。
自営業の方であれば、一人当たりの納める額は決まっているので払った額は不要です。
しかし厚生年金の場合は、その方の年収によって社会保険料が変わり年金額も異なってくるので、一概にいくらだとお伝えすることが出来ません。
・年金は10年以上払えば貰える
・国民年金の年額
・厚生年金の簡単な計算方法
年金は最低10年以上払えば申請することで貰える!!
以前までは、年金を貰える条件は25年以上でしたが平成29年から法改正で10年に変わりました。
しかし、納める期間が長ければ長い程、年金額に反映されるので1か月でも長く収める方が当然ですが得です。
・年金額は少ない
・自ら年金請求書で手続きが必要
・遺族年金は25年の加入期間が必要
ちなみに、10年間加入して年金を請求したとすると、年間20万円弱(国民年金のみの場合)の額です。
とてもじゃないですが、それだけでは生活は難しいことからもきっちり納め続けましょう。
なお、期間については納付済期間、保険料免除期間及び合算対象期間(カラ期間)を合計して何年納付したか判断されます。
納付済期間 | しっかり毎月満額納付した月 |
---|---|
保険料免除期間 | 一部または全部保険料を免除された月 |
合算対象期間 | 期間には含まれるが年金額には反映されない月 |
学生納付特例 | 学生期間は保険料を免除される月 |
一番は、全てが納付済期間であることが望ましいですが、時には働けない時期もありますよね。
例)
納付済期間 : 7年
保険料免除期間: 2年
合算対象期間 : 1年 合計10年間
上記の場合、満額納付した月は7年間ですが免除期間や合算対象期間があればその分も足し合わせた結果、何年か判断されるのです。
しかし、年金額については免除された額及び合算対象期間は反映されません。
よって、納付済期間の7年間と保険料免除期間の2年間分の支払った保険料をもとに年金額が計算されます。
合算対象期間は、あくまでも期間にだけ足し合わせてくれるだけなのです。
老齢基礎年金は満額で申請すれば年間78万円!!
国民年金の老齢基礎年金は、収入の差に関係なく平等に満額で約78万円です。
ちなみに、満額が貰える条件として40年間の保険料を納める必要があります。
前述したように、保険料免除期間や合算対象期間がある場合は78万円より低くなるのです。
約78万円*×保険料納めた月数/480月
*:年度により金額に若干の修正有り
つまり、全ての月を納めて480か月(40年)であれば78万円×1となり満額貰えることになります。
保険料免除期間
全額免除期間 | 免除期間×4/8 |
---|---|
3/4免除期間 | 免除期間×5/8 |
半額免除期間 | 免除期間×6/8 |
1/4免除期間 | 免除期間×7/8 |
上記のように、8を満額納めた月として一部減額されることになります。
保険料納付済期間
・35年間 約68万円
・30年間 約58万円
・25年間 約48万円
・20年間 約39万円
老齢厚生年金は会社員のキャリアで年金額がいくらか決定!!
厚生年金である老齢厚生年金は、会社員であった期間でいくら給料を貰ったかによって決まります。
厚生年金の総称である社会保険料は、給料が高ければ高い程に保険料が高くなるのです。
考えてもみて下さい。
給料が20万円の方と、50万円の方であれば保険料は2倍以上違ってきます。
納める額が多ければ多い分、一律の額で納める国民年金と比べて年金額が増えるのも当然です。
では、いったいどの程度の年金額がもらえるのでしょうか?
平均的な年収でしっかり40年間納付していれば月15万円は貰えることになるといっていいでしょう。
平均標準報酬額×7.125/1000×被保険者期間*1
+
平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間*2
*1:平成15年3月までの月数
*2:平成15年4月からの月数(賞与も含まれることになる)
「ちょっと言ってる意味がわかりません」となるでしょう。
つまり、これまでに貰った額を大雑把でも構わないので、合計して加入期間中の月数で割ればあなた自身の平均標準報酬月額を求めることが出来ます。
例)・加入期間40年間
・平均標準報酬月額30万円
30万×7.125/1000×240月=51万円
30万×5.481/1000×240月=39万円
約51万+約39万=約90万円
78万(基礎)+90万(厚生)=約168万円
つまり、40年間毎月積み重ねて納付した結果、給料の平均が30万円だった場合は約168万円の年金額を貰うことが出来るということです。
(生年月日によって7.125の月か5.481の月なのか違いがあるため変動があります。)
そんな面倒な計算してられないよということであれば、誕生日月に日本年金機構からねんきん定期便が届きます。
ねんきん定期便には、現時点で年金がいくら貰えるのか目安が分かるようになっているので確認してみましょう。
節目の35歳、45歳、59歳の年にはより具体的な内容が記載されたねんきん定期便が届きます。
万が一、ねんきん定期便が届いてないということであれば会社に住所変更を伝えていないか実家に届いてる可能性があるので確認しましょう。
申請手続きの時期を自分で決めて年金額を増やせる!!
年金は、対象になったらか勝手に振り込まれるわけではありません。
裁定請求といった手続きをもって、亡くなるまで年金を受給出来るようになります。
実は、裁定請求の時期をずらすことで年金を早く貰うことが出来たり、増やすことが出来るのです。
・繰り上げ請求
・繰り下げ請求
・繰り上げ下げの損益分岐点
年金額が減ってもいいから申請して早めに貰いたい!!
通常よりも早く年金を貰うことを「繰り上げ請求」と言います。
65歳から貰える年金を、最高5年を縮めた60歳から受給出来るのです。
しかし、早めに貰えるといっても、満額のまま貰えるわけではありません。
早く貰うことで年金額は減額されて受給することになるのです。
老齢基礎年金の場合
65歳 | 約78万円 |
---|---|
64歳 | 約73万円 |
63歳 | 約68万円 |
62歳 | 約63万円 |
61歳 | 約59万円 |
60歳 | 約54万円 |
厚生年金も同様に減額されて受給となりますが、60歳から貰う魅力も人によってはあることでしょう。
私は、絶対長生き出来ないと自信をもって言えるのであれば繰り上げ請求も有です。
・一生涯減額された年金額
・原則、障害年金が受給出来ない
・国民年金の任意加入が出来ない
繰り上げ請求をすると、やっぱり65歳から受給出来るようにしたいといった変更が出来なくなり一生涯減額されたまま貰うことになります。
つまり、長生きをしてしまうといずれ65歳から貰う年金額よりも損する可能性が出てくるのです。
繰り上げ年数によって異なりますが、80歳以上になれば確実に損してきます。
その他にも、不慮の事故で障害を負った場合にも繰り上げ請求をしていると原則障害年金を受給出来ません。
障害年金は、障害の等級にもよりますが老齢年金よりも手厚くなっているので、障害を負ってしまった場合も繰り上げ請求はリスクがあります。
まだ働いているし申請を遅らせて年金額を増やしたい!!
繰り上げ請求とは逆に、お金にまだ困っていない若しくはまだ働いてるからといった場合に年金の受給を遅らせることが出来ます。
それが、「繰り下げ請求」です。
70歳までを上限として、繰り下げ請求が出来ます。
老齢基礎年金の場合
65歳 | 約78万円 |
---|---|
66歳 | 約84万円 |
67歳 | 約91万円 |
68歳 | 約97万円 |
69歳 | 約104万円 |
70歳 | 約110万円 |
私は、不慮の事故がない限り長生きすると自信があり、お金にも多少余裕があれば繰り下げ請求することも有でしょう。
もちろん、厚生年金の老齢厚生年金も同様に増えて行きます。
・損益分岐点以前に亡くなると損する
・60歳前半の報酬比例部分は対象外
繰り上げ請求よりはデメリットは少なく、しっかり長生きすれば間違いなく得します。
繰り上げ請求、65歳、繰り下げ請求の三択は非常に悩ましいことです。
なんせ、自分自身が何歳まで生きるかなんて誰にも分りませんから。
最終的にはご自身の選択です。
繰り上げか下げか申請に悩む年金額の損益分岐点は!?
最終的にはご自身の判断にはなりますが、実際どの程度で損するのか得するのか知っておくのも必要でしょう。
繰上年齢 | 損益分岐点 | 繰下年齢 | 損益分岐点 |
60歳 | 76歳半 | 66歳 | 78歳 |
61歳 | 77歳半 | 67歳 | 79歳 |
62歳 | 78歳半 | 68歳 | 80歳 |
63歳 | 79歳半 | 69歳 | 81歳 |
64歳 | 80歳半 | 70歳 | 82歳 |
左は繰り上げ、右は繰り下げの損益分近点です。
あくまでも目安ですが、損益分岐点の年齢に達すると繰り上げの場合は、それ以降に損します。
繰り下げの場合は、損益分岐点を超えるとそれ以降に得ということです。
社労士としてのアドバイスをさせて頂くと、今では65歳で働いているなんてことは極々当たり前で70代でも十分元気に働いています。
平均寿命も延び、長生きできる若しくはしてしまうといった状況の中、出来る限り繰り上げ請求はおすすめしません。
本当に生活に困窮しない限りは、65歳以降に受給するようにしましょう。
前述しましたが、繰り上げしてしまうと変更は絶対に出来ません!!